今回のコラムでは、脳卒中関連の基礎的な知識や、歩行の特徴とそのリハビリテーションについてまとめていきます。脳卒中とは脳卒中とは頭の中の血管に起こる病気です。「がん」「心筋梗塞」「老衰」に次ぐ、日本での死亡原因の第4位の病気で、また、病気を契機に寝たきりになってしまう原因のなかでは第2位の病気です。脳卒中には、脳の血管が破れて出血する「脳出血」「くも膜下出血」と、脳の血管が詰まる「脳梗塞」があります。脳卒中の発症と関連のある因子加齢に伴い、発症率が高まることが推測されています。その他の要因としては高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙、飲酒などが挙げられます。その中でも最大の原因は高血圧と考えられています。血圧の上、収縮期血圧が140mmHg以上の場合、脳卒中発症確率は3倍以上との報告もあります[高血圧ガイドライン2009]。すこしまとめると、動脈を傷つける要因・動脈が傷つきやすい要因・血管を詰まらせやすい要因という3つが影響するようです。運動でも血圧は上昇するので、その際の血圧上昇の差分なども意識したいですね。脳卒中の初期症状脳は非常に複雑です。脳の血管の中で出血しやすい部位などはありますが、少しの違いでも症状が多種多様になりえます。明らかに脳出血であるにもかかわらず症状が何も起こらないこともあれば、フィニアス・ゲージのように金属棒が脳に貫通しても生還したりと…(フィニアス・ゲージはのちに脳の損傷により人格が変わってしまい、『もはやゲージではない』と言われるようになりましたが…)発症直後の症状には以下のような症状が挙げられます。身体の左右半分にマヒ・しびれが起きる呂律が回らない、言葉が上手く出てこない、会話が通じない片方の目が突然見えなくなる激しい頭痛やめまいが突然起こる力はあるのに上手く立てない、ふらつく などこれらの症状が出た場合はなるべく早く病院へ行くことが推奨されています。歩行に関する特徴臨床でみられる特徴として、以下のような特徴が挙げられます。痙性はじめに、以下の歩行に関する特徴は主として、痙性の影響を受けることが考えられます。痙性とは、痙攣のような状態を指し、ある運動を行おうとしたときに司令塔となる一次運動野からの伝達経路にあたる錐体路に障害があった場合にしばしば起きる特徴になります。過度な緊張に反応するように、筋肉の抑制が効かず筋肉が緊張してしまう状態となります。対策としては装具療法が一般的に用いられます。ぶん回し歩行蹴り出し後に、足を旋回させて躓きを回避するように大きく外側に振り出す歩容です。足首(ふくらはぎ)の緊張が強くなることに起因して出現されます。反張膝麻痺側の足に荷重がかかるさいに、ふくらはぎの緊張が高いことと、膝周囲の筋が緊張しないなどを起因として、膝が反ってみえるような歩容を指します。極端な例としては、バレリーナの膝などのように、反対方向に曲がるような状態を指します。出典1:MartyTimes「バレエで膝が入らない!膝が入る方法はある?」動画で見る%3Ciframe%20width%3D%22960%22%20height%3D%22540%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2F7w-fhfdifNc%3Fcontrols%3D0%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E脳卒中のリハビリテーション基本的には、段階的に進めていくことが重要とされることが多いです。例えば、どこまで出来るのか、どこからが難しい運動なのかを探索しながら「すこし難しいけどちょっと手を伸ばせば出来る」ような具合の運動課題をみつけて反復することがポイントです。現代は、さまざまな道具を使うことができるようになりつつあるので、ふんだんに環境のなかの道具を使いながら、できるようになりたいこと(課題志向)を基に治療ができることが好ましいのではないでしょうか?例えば、理学療法とロボット支援等の機器を組み合わせたほうが歩行速度がより多く改善された(+0.09m/s)との報告もあります[G Moucheboeuf et al, 2020]。また、歩行においては麻痺側、非麻痺側といった左右差の概念で定量化をすることもあります。単脚支持時間の左右の比を健常者と比較した研究では、左右の比が健常者では1.02に対し、脳卒中患者は1.23以上をとるという結果もあります[Patterson KK, et al. ,2012.]。また、発症時期で急性期と回復期という棲み分けをすることも多いようです。それぞれ、時期に応じたリハビリテーションの役割として、以下のような役割が考えられます。急性期外科的治療や薬物療法を中心に、安静臥床に伴う二次的な合併症の予防。早期離床のための安全管理などを念頭に置いて、いち早く動作獲得し自立した生活を目指すためのリハビリテーション回復期退院先での生活と、その環境を見据えたADL(日常生活動作)練習や歩行練習身体活動を継続するための環境調整なども含めて社会復帰を目指す出典2:QLife「要介護」「リハビリ難民」…いま脳卒中のリハビリに何が起こっているのか脳卒中発症後の回復曲線をベースにリハビリテーションで志向する方向性がそれぞれの病期において検討されることが主流となっています。おわりに今回は、脳卒中に関する情報をまとめてみました。調べて改めて感じたことですが、高血圧をどう防ぐかというところが予防において大事な要素だと思いました。本内容が皆様のお役に立つ情報になれば誠に幸いです。参考文献理学療法ハンドブック作成委員会. 理学療法ハンドブック シリーズ2 脳卒中, 第2版.公益社団法人 日本理学療法士協会. 2020. https://www.japanpt.or.jp/about_pt/therapy/tools/handbook/Moucheboeuf G, Griffier R, Gasq D, Glize B, Bouyer L, Dehail P, Cassoudesalle H. Effects of robotic gait training after stroke: A meta-analysis. Ann Phys Rehabil Med. 2020 Nov;63(6):518-534.編集:吉尾雅春,監修:奈良勲. 標準理学療法学 専門分野 運動療法学各論, 第3版.医学書院. 2010, p150-160.出典1:MartyTimes「バレエで膝が入らない!膝が入る方法はある?」https://onl.bz/MDM1mQ2(最終閲覧:2022/12/06)出典2:QLife「要介護」「リハビリ難民」…いま脳卒中のリハビリに何が起こっているのか」https://www.qlife.jp/square/feature/ownexpensereha/story63341.html(最終閲覧:2022/12/06)Kara K. Patterson, Neelesh K. Nadkarni, Sandra E. Black, William E. McIlroy. Temporal gait symmetry and velocity differ in their relationship to age,Patterson KK, et al. Gait Posture. 2012. Apr; 35(4): 590–594.