読者の皆さんの中には臨床において日常的に歩行分析を実施している方が多くいらっしゃると思いますが、所属している医療機関が歩行分析検査で医科診療報酬点数を算定しているという方はあまり多くないのではないでしょうか。歩行分析検査とは、医科診療報酬点数表「D250平衡機能検査 5 下肢荷重検査, フォースプレート分析, 動作分析検査」に相当します[大橋ら. 2007]。今回の記事では、歩行分析検査と医科診療報酬点数、歩行分析計(医療機器クラスⅠ)の対応について解説します。D250平衡機能検査とは歩行分析検査の説明をする前に、まずその大枠のD250平衡機能検査について説明します。平衡機能検査は下記から構成されます。記載されている点数は医科診療報酬点数であり、1点=10円で計算され、医療機関からレセプト請求された場合に、行われた医行為の点数に対応する金額が保険者から医療機関に支払われます。1. 標準検査(一連につき): 20点上肢偏倚検査(遮眼書字検査、指示検査、上肢偏倚反応検査、 上肢緊張検査等)下肢偏倚検査(歩行検査、足ぶみ検査等)立ちなおり検査(ゴニオメーター検査、単脚起立検査、両脚起立検査等)自発眼振検査(正面、右、左、上、 下の注視眼振検査、異常眼球運動検査、眼球運動の制限の有無及び眼位検査を含む検査) 2. 刺激又は負荷を加える特殊検査(1種目につき): 120点ア 温度眼振検査(温度による眼振検査)イ 視運動眼振検査(電動式装置又はそれに準じた定量的方法により刺激を行う検査)ウ 回転眼振検査(電動式装置又はそれに準じた定量的方法により刺激を行う検査)エ 視標追跡検査オ 迷路瘻孔症状検査3. 頭位及び頭位変換眼振検査イ 赤外線CCDカメラ等による場合 : 300点ロ その他の場合 : 140点4. 電気眼振図(誘導数にかかわらず一連につき)イ 皿電極により4誘導以上の記録を行った場合 : 400点ロ その他の場合 : 260点5. 重心動揺計, 下肢加重検査, フォースプレート分析, 動作分析検査 : 250点6. ビデオヘッドインパルス検査 : 300点歩行分析検査とは「D250平衡機能検査 5」には「重心動揺計, 下肢加重検査, フォースプレート分析, 動作分析検査」の4つの検査がありますが、重心動揺計を除く3つが歩行分析検査に相当します[大橋ら. 2007]。「D250平衡機能検査 5」に区分される「重心動揺計, 下肢加重検査, フォースプレート分析, 動作分析検査」の4つの検査は、医科診療報酬点数の改訂があった2000年当初は「1.標準検査」を行った上で実施の必要が認められたものに限って算定することが可能な検査でした。しかし、①本来は歩行分析検査に相当する「下肢加重検査, フォースプレート分析, 動作分析検査」は単独で算定可能であるべき との考え方や、②平衡機能検査が主に対象とする耳鼻咽喉科学的疾患のみならず、リハビリテーションの対象疾患、整形外科学的疾患、脳血管系疾患、脳外科学的疾患、神経内科学的疾患などの幅広い疾患にも適応されるべき との考え方がありました。そこで、2007年に厚生労働省から「D250 平衡機能検査 5 重心動揺計、下肢加重検査、フォースプレート分析、動作分析検査」を算定する場合の解釈についての方針が示され、正式に単独での算定・幅広い疾患への適応が可能になりました[日本リハビリテーション医学会. 2007]。算定の条件は、医師が医療上必要と判断して歩行分析検査を実施した場合です。医科診療報酬点数の算定方法と歩行分析計の対応歩行分析検査と呼ばれるものには以下の3つが含まれ、それぞれ対応する歩行分析計が異なります。歩行分析計の分類については前回のコラムをご参照ください。歩行分析検査で医科診療報酬点数を算定するためには、以下のうちどの検査を行うか、その検査が医療上必要かを適正に判断した上で実施し、レセプト請求を行います。下肢加重検査主に圧力センサー(靴式足圧計測装置、シート式足圧接地足跡計測装置等)を用いて下肢荷重を計測する検査。フォースプレート分析フォースプレートを用いて歩行の力学的な分析を実施する検査。動作分析検査動作分析装置や慣性センサーを用いて運動学的な分析を実施する検査。弊社が販売する歩行分析システム「ORPHE ANALYTICS MEDICAL」は、歩行分析計(慣性センサー)を使った製品であるため、「動作分析検査」を実施する際の補助ツールとして使用して、1回250点(2500円)の医科診療報酬点数を請求することが可能です。おわりに今回のコラムでは、歩行分析検査と医科診療報酬点数、歩行分析計の対応について解説してみました。歩行分析の臨床検査として位置付けや、医科診療報酬点数を算定する場合の条件について、ご理解いただけたでしょうか。本内容が皆様のお役に立つ情報になれば誠に幸いです。参考文献大橋 正洋, 別府 政敏, 歩行分析検査と診療報酬について, 総合リハビリテーション. 2007. 35巻12号1505-1507.日本リハビリテーション医学会, 医科診療報酬点数表「D250 平衡機能検査 5 重心動揺計、下肢加重検査、フォースプレート分析、動作分析検査」を算定する場合の解釈について, Jpn J Rehabil Med. 2007. 44巻8号435.