「歩行分析の意義や方法論は理解したけど、結果をどう表現していいかわからない...」「同じ患者様の歩行について複数人がばらばらな分析結果を言っている...」「歩行スピード以外に定量化できる指標はないのか...」この類の疑問や悩みは非常に多いと思います。これだけデジタル化が進んだ現代においても、歩行分析はまだまだアナログで結果も定性的に表現されることが多いですよね。そこで今回は、歩行分析を定量化するための強い味方、歩行分析計について解説していきます!歩行分析計とは医療機器クラスⅠに分類される機器で、歩行又は走行パターンを試験する装置を指します。歩行分析を定量化(数値化)していくための機器と捉えることができます。様々な種類のものが販売されていて、種類によって機能面や価格面でメリット・デメリットがありますので、以下で解説していきたいと思います。歩行分析計の種類とメリット・デメリット現在国内で販売されている歩行分析計は下記の4種類に大別されます。3次元動作分析装置(モーションキャプチャー)身体の様々な位置に反射マーカーを貼り付けて、複数台の特殊なカメラでそれを撮影することで身体運動を3次元的に分析できる装置です。最近では身体運動の分析というよりも、VTuberのアバターを動かすために使っているシーンで見かけることが多いかもしれません。メリット: 身体部位の位置や関節運動を非常に高精度に分析可能デメリット: 非常に高価床反力計(フォースプレート)力の大きさだけでなく、力がどんな方向にかかっているかまで計測することができる、分厚いプレート状の機器です。体重計がより高精度になったようなものとしてイメージすると良いかもしれません。厚みがあるので、路面に窪みを設けて埋めたり、それができない場合にはプレートの周辺に板などで同じ高さの歩行路を設けて計測します。メリット: 身体にかかる力を非常に高精度に分析可能デメリット: 非常に高価。プレート状に接地した一歩のデータのみが分析対象になるため、複数歩の分析を行うには複数台のプレートが必要。圧力センサーシート状のサンサーで、足底のどの部分にどの程度の圧力がかかっているかを計測可能な機器です。数m長のシートを路面に敷いて計測する製品や、インソール型のシートをシューズの中に挿入して計測する製品があります。メリット: 計測自体は簡便で、圧力が集中している部位やCOP(圧力中心)の軌跡などを可視化することができる。デメリット: 毎回の計測前にキャリブーションが必要な製品が多い。慣性センサー加速度や角速度を計測可能な数cm台の小型センサーです。加速度計と呼ばれている場合もあるかもしれません。腰部に1個だけ取りつけて身体重心のデータとして歩行を分析する製品や、関節を跨いで複数個を取り付けて関節角度を計算する製品があります。多くのスマートフォンにも搭載されているくらい、社会に実装されているセンサーです。メリット: 計測準備や計測自体が非常に簡便で、歩行の安定性のような概要的や評価や、関節運動・時空間パラメータなどを評価することができる。デメリット: 計測や演算過程でデータに誤差が乗りやすい。その他また、医療機器の届出がされたものではありませんが、今後臨床で活用が進むであろう画像解析系の技術についても触れておきます。これまでも身体にシールやマーカーを貼り動画を撮影すると、マーカーを自動/手動で追尾して2次元的に身体運動を分析する装置はありました。しかし、現在台頭してきている技術は完全マーカーレスで、動画を取るだけでAIが自動で関節位置などを推定してくれます。この技術は、姿勢推定/骨格推定/pose-estimationなどと呼ばれています。現時点では精度が十分ではなく部分的な活用可能性が示されていますが1)、どんどん推定精度が上がってきているので臨床で本格的に活用される日も近いでしょう。ORPHE ANALYTICS MEDICALのご紹介 弊社が開発している歩行分析システム「ORPHE ANALYTICS MEDICAL」は、上記の慣性センサーを使った製品です。慣性センサーのデメリットを補うために独自のアルゴリズムを開発し、3次元動作分析装置と比較した精度検証も実施しています。弊社は元々日常で使っていただけるウェアラブルデバイスとしてスマートシューズ(慣性センサーを内蔵したIoTシューズ)を開発していました。スマートシューズの特長は、シューズを履くだけで「いつでも・どこでも」歩行を計測できる点です。そして、その計測の範囲を臨床にも広げるために開発したのが「ORPHE ANALYTICS MEDICAL」です。歩行や歩行分析の重要性は前回のコラムにも書きましたが、なかなか簡便に歩行を計測できる仕組みがありませんでした。しかし、我々がウェアラブルデバイスとして発売しているスマートシューズは、既に日常生活の歩行を簡便に計測してユーザーの方のデータを蓄積し始めています。そして、臨床に対しても弊社のこの簡便な仕組みを提供して、歩行分析の定量化とデータの蓄積を実現したいと考えています。日常と臨床の歩行が同じような仕組みで計測されるようになれば、PHR(パーソナルヘルスケアレコード)の医療活用の意義も増していくでしょう。そんな将来像を描く会社が販売している歩行分析計「ORPHE ANALYTICS MEDICAL」。忙しい臨床業務の中でもご活用いただけるレベルになってきていると思います。もし少しでも興味をお持ちいただけましたら、是非お問合せいただければと思います。おわりに今回のコラムでは、歩行分析を定量化するための強い味方、歩行分析計について、弊社製品の紹介も含めて解説してみました。まだまだアナログな歩行分析ですが、ツールをうまく使いこなせば、簡便に定量化できて、データを蓄積できて、そのデータを活用して業務効率化やリハビリ品質の向上など新たな価値を想像できるはず(これぞDX!)。ということで最後に少し熱くなってしまいましたが、本内容が皆様のお役に立つ情報になれば誠に幸いです。参考文献Ota M, Tateuchi H, Hashiguchi T, Ichihashi N, Verification of validity of gait analysis systems during treadmill walking and running using human pose tracking algorithm, Gait Posture. 2021 Mar;85:290-297.